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エンジニアリングマネージャーの成長と育成

こんにちは!チームボックスのヤスニシです。

この記事は、Engineering Manager vol.2 Advent Calendar 2018 の17日目の記事です。

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「成長=スキル習得」だけではない

エンジニアリングマネージャーが最近熱く、勉強会や記事が増えてきていて個人的にはとても嬉しいです。今回は、その中でもあまり触れられていないエンジニアリングマネージャーの成長と育成について考えてみようと思います。これは私的になかなかチャレンジング。

「成長=スキル習得」というようなイメージが強いのですが、実は同じくらい大事なことがあり、そこができるかどうかが成長し続けられるかどうかの鍵を握っています。スキルややり方については、このような最近多くの本や記事も出てきてますので、ちょっと違う観点で書いてみます。

エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング

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まず、EMはどういう人がやれば良いんだろう?

エンジニアはものづくりをしたくてやっているからか、エンジニアリングマネージャーをやりたがらない人が多いです。とはいえ、開発現場の課題というのはプログラミングだけで解決できるものだけではないので、肩書がついてなくてもどうしても現場でEM的な動きが必要になります。

優秀なエンジニアは知的好奇心が高く、目の前の課題が大きいと学ぶ方が多いので、解決策がプログラミングじゃなかった場合でも触手を伸ばす方がいます。そうするとEMの仕事をやってもうまくいくことがあります。そういう「何に対しても学べる方」方がEMには向いているのではないでしょうか。

逆に単にマネージャー(という役職)になりたいという方は、目的が課題解決ではなく役職になることである場合もあるので、そこは見極める必要がありそうです。

問題解決のために「人間の適応」に目を向ける

EMをやってみると、これまで見たことが無いような課題にぶち当たったり、唯一正しい答えを決められずに悩み、決定によってさらに問題が起こり悩む、ということが増えます。

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課題解決方法の分類

何か問題が起こると、原因を探り対策を練り、技術的手段を探します。もちろんそれで解決することもあるわけですが、「人間の適応」が必要な場合があります。

リーダーが犯す最も大きな過ちは、適応を要する課題を解決したいときに技術的手段を用いてしまうことだ

というのは、↓の本の一節です。問題を見極め「人間が適応」に対しても対策をすることが必要です。そしてEMが対峙している問題は、人間の適応が必要な問題が多く、まず自分自身が適応しない限り、一緒のチームのメンバーも適応することができません。そのためには、私はEMがメンバーよりも自分を変え「学び続ける」ことができる、ということが大切なのではないでしょうか。 

なぜ人と組織は変われないのか――ハーバード流 自己変革の理論と実践

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我々はどのように学び続ければよいのか

では、どのように学べば良いのか。チームボックスでのリーダー育成の考え方を元に、EMの仕事を想定して4つのポイントに整理してみました。このような構造になっています。

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①弱みや失敗をなんでも言い、さらけ出す

失敗をしたときに、プライドが邪魔をして、失敗を認められないことはあるのではないでしょうか。そうすると「自分で認められない→学び変わる必要がない→学べない」ということになってしまいます。

そのために、まずは他人に言ってみることです。勇気がいりますが、弱みや失敗を言うことによって、自分自身もそれを受け容れることができるようになります。自分が受け入られると、何かやったときの結果や、他人からのフィードバックも受け入れられ、どんな機会からも学べるようになります。

本当の勇気は「弱さ」を認めること

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②過去の学びを捨て、Unlearnする

学んできて、成功した実績があることは素晴らしいことです。でも、それがどんな場合でも役に立つわけではありません。ときには、その学びをあえて捨てて、別の学びを得る必要があります。

ただ、それにはどうしても痛みが伴います。今までの自分を一部否定するような感覚にもなるので。ただそこに向き合い、純粋な好奇心で新しいことから学ぶことができると、自分を成長させることができます。

mirai.doda.jp

③自分と向き合い、自分を知る

自分は今どういう状態なのか、何を学ばなければならないのか、何をUnlearnしなければならないのか、というのは、自分自身を知らないわかりません。わからないと、その後のアクションにつなげることができず、学ぶのが難しくなります。

その根源の多くは感情からやってくるのですが、感情は自分で認識するのは難しく、何もしないと目の前を通過していきます。つまり、努力をしないとできません。普段の仕事の中で自分へのセンサーを働かせ、自分の感情や無意識を知るようにします。

自分の感情を知るためには、気がついた時にノートにメモし、言語化すると良いです。毎日続けていくと、だんだん自分が何を感じているかが理解でき、次にどんな行動を変えるべきかが見えてきます。

④行動を変え、ふりかえる

何を変えるべきかわかったら、行動を変えます。行動を変えると、結果が出ます。結果をそのままにしておくと、学ぶことができません。しっかりとふりかえりを行い、何が良くて何が悪かったのか、次何を変えるべきかの結論を出すことで、学びが習慣化します。

エンジニアチームは、スクラムなどを導入することにより、チームでふりかえりをすることは多いと思いますが、自分自身のことについてふりかえる人は少ないと思います。チームと同様、個人で振り返ることで、改善プロセスが回るようになっていきます。

corp.netprotections.com

EMの育成ではこの4つのポイントもフォローする

EMを育成する場合に、チームビルディングやプロジェクトマネジメント、スクラムなどの知識やスキルを習得すること(主に技術的手段)と同時に、これらの適応に関してもフォローをしていくことが大切です。

そのために1on1やEMでのミーティングなどで、①〜④の学びについても一緒に考え、何か新しいアクションを行い、自分自身の成長に向き合い続ける環境を作り続けると、個人だけでなくEMを中心として全体で学び続ける組織を作ることができると思います。

やるのは難しいけど、学びには喜びがある

私自身、適応問題で悩み続けました。何か課題があるときに、自分自身が変われず、なかなか前に進めないという苦しいことが多くありました。ただ、このような考え方に出会った時に、少しずつ自分自身が成長するということの意味がわかってきました。

特にマネージャーの仕事は明確な答えが見えないことが多く、どの選択肢を意思決定してもどうなるかわからない、というようなことが多くなります。そうなると、わからないという事実や失敗に向き合わなければならなくなります。

そういう意味で、EMは人間の適応という意味での「学び」を意識する必要が多くなると考えています。ただこれが結構難しい。でも、やれたとしたら問題解決とともに自分が成長できるので、喜びが多くあります。

是非チャレンジしましょう!私もがんばります。